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【 報 告 】

2018東アジア国際シンポジウム

研究所活動報告

南北首脳会談に合わせ「2018東アジア国際シンポジウム」

4月17日、ソウルで緊急開催

「朝鮮半島の平和体制構築と周辺国の国際協力」をテーマに論議

 

 

東アジア総合研究所は2018年4月17日、韓国の漢白統一財団と共同主催で、「朝鮮半島の平和体制構築と周辺国の国際協力」をテーマに、ソウルの韓国国会図書館小会議室で、第17回目の「2018東アジア国際シンポジウム』を開いた。年初から対話局面に劇的転換し、スピード感を伴って進みつつある朝鮮半島の非核化の動きを注視しながら、南北朝鮮だけでなく米国、日本、中国、ロシアの専門家、学者が情勢を緊急分析し、協力の道を探った。

史上3回目の南北首脳会談が行われるちょうど10日前に当たり、内外報道陣の関心も高く、約100人が3時間にわたり熱心に意見を交わした。

韓国統一省、韓国安保統一研究院、国会議員の薛勲=ソル・フン議員室の後援を受けた。

 

急がれる非核化へのロードマップ

漢白統一財団常任代表の鄭容相=チョン・ヨンサン東国大学教授が、開会あいさつで「冬期五輪を契機に南北和解機運が高まり、朝鮮半島の周辺諸国が意気投合する好機を迎えたが、『きれいな珠もうまくつなぎ合わせて初めて宝物になる』という格言を挙げて期待表明し南北双方指導者の努力を訴えた。

盧武鉉政権下で、外交通商相を務めた尹永寛=ユン・ヨングァン=ソウル大学名誉教授が基調講演を行った。「慎重に見守る必要はあるが、金正恩党委員長が適切な補償で核プログラムを廃棄する戦略的決断を下した可能性があり、在韓米軍撤退や米韓同盟終結にこだわらないかもしれない」と指摘した。

国際レベルの協力問題では、朝鮮半島の平和定着、さらに統一後も、米韓同盟の持続は避けられないはずだとの見解を示した。米中間の戦略的競争がますます深刻化しているため、北朝鮮の非核化という共通の目標に向け協力してきた米中信頼関係が悪化し、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築にマイナスの影響を与える可能性があり、韓国政府の当面課題は米中の摩擦可能性を減らすことだとした。米中対決構図が、日米と中ロの両陣営対決につながりかかねないため、日本とロシアに、投資機会の拡大などを訴え平和体制構築に建設的役割を担うよう働き掛ける必要があり、韓ロ間の協力の基盤造成が不可欠という。

韓国政府は朝鮮半島の非核化、在来型軍事力分野での緊張緩和、平和協定、非軍事分野の南北協力、米朝・日朝の国交正常化、「南南葛藤」の解消などをどのように相互連携させ、任意の時間的順序で進めていくか、その過程で米中関係と朝鮮半島周辺国の利害関係と力学関係をどう投影させていくか、正確なロードマップ作成を急ぐべきだ、とまとめた。

 

第1部 テーマ=朝鮮半島の平和体制構築への方策)

午前10時半、韓国安保統一研究院の河正烈=ハ・ジョンヨル院長の司会で、第1部冒頭は鄭京泳=チョン・ギョンヨン漢陽大学教授による報告「朝鮮半島の平和体制の推進戦略」がなされた。

過去の南北、米朝交渉などの略史を概説した後、教訓として①休戦システムは南北の意思だけで作られたものでない、②韓国で進歩・保守の政権交代が続いたために一貫性ある統一政策ポリシーに欠けた、③北朝鮮が核・ミサイル開発や休戦協定の無力化を図ってきた背景には軍事力による対南赤化統一が依然としてあると思われる―と指摘した。

鄭京泳教授は「核と平和は共存できない」と改めて緊張緩和が必要だと強調、南北首脳会談や非核化会談を積み重ねて北朝鮮の核・ICBM廃棄を実現していくが、同時に、非核化交渉の決裂時には北朝鮮の核やミサイルの脅威に決然と対応しながら軍事行動を通じて脅威を除去し、場合により戦争を覚悟する心構えが求められる、と結論付けた。

次に米国人のイーザリ梨花女子大学准教授が「北朝鮮の非核化と関与政策についての米国の懸念」と題する報告を英語で行った(韓国語へ通訳)。米国が米韓同盟に対する信頼感と日本との協力をどう維持し、米韓離間を狙う北朝鮮にどう対応するかが課題となると位置付けた。

非核化より安定と地政学的優位を重視している中国、利害を共有しているものの同一見解を持ち続けることに苦闘している米国、韓国、日本の多角的関係も流動的だという。

文在寅大統領は「朝鮮半島の軍事行動は韓国の事前同意なしに行われない」と繰り返し、南北関係改善の先導役を務め、統一の道筋を決定していくと強調してきた。米の「最大限の圧力」は意図せぬ対立深化を招きかねず、このため平昌五輪外交が安全弁となった。

しかし南北関係が改善されても、非核化問題で進展がなければ、米韓両国の信頼関係が損なわれかねないと予測。米の政策立案者は、事態転換の外交機会を奪われたと韓国から非難を浴びないように、韓国側も北朝鮮の核ミサイル開発を阻止する「最後のチャンス」を妨害したと米側から批判されないよう警戒する必要がある。緊張緩和努力は、国連の制裁に反してはならず、米韓両国の信頼感を犠牲にすべきではない、というのが結論だった。

北朝鮮からの脱出住民(脱北者)の団体「NK知識人連帯」の金興光=キム・フングァン代表が第1部の最後に「軍事的信頼を構築するには」と題して人権問題などを報告した。

最近、北朝鮮は、信頼構築と軍事的信頼構築に部分的に同意しているが、非核化のスケジュール長期化を狙っているようだと指摘。現在の過渡的南北関係では、軍事的に敵対関係を維持しつつ、平和と共存を獲得しようとする二重構造が続かざるを得ないとして、①軍事的信頼構築の行動は非核化プロセスの推進速度に合わせて進めよと求める、②多様な協議の機会を通じ北朝鮮の持つ非核化の実際の目標とプロセスについて高度情報を取るさらなる情報活動の強化、③北朝鮮のハッキングやサーバー攻撃に対し一層徹底的な対応―などの必要性を指摘。韓国政府は、「森と木を同時に見る洞察力」を持ちながら、賢く軍事的信頼構築の問題を解決していくべきだと訴えた。

韓国国家戦略研究院の文聖黙=ムン・ソンモク研究委員がコメント役を務め、北朝鮮の平和協定固執は、ベトナム戦争の教訓だと指摘、鄭京泳教授の見方に賛同した。

会場からの質問に答え、鄭京泳教授は2020年が非核化交渉の節目になるとの見通し、イーザリ准教授は北朝鮮の人権問題を取り上げる重要性を韓国の中進国性と絡めて強調した。

 

第2部 テーマ=平和体制構築の環境作りのための方策)

韓国の高麗大学大学院で学ぶ趙青峰=チョウ・チンフン氏が「東北アジア平和体制の構築戦略」を報告。習近平主席の「運命共同体」概念をキーワードに、中国外交の根底となっている考え方や、周辺諸国との関係を説明した。

金正恩政権の発足以来ぎこちなかった中朝関係は、北朝鮮の要請で中朝首脳会談が実現。

北朝鮮核問題から引き起こされた緊張を解消し、域外国・米国が地域の出来事に介入する影響力を縮小させるのが基本的な追求方向だという。ただし「6カ国協議」の時期ほど中国の主導権は大きくなくなっているのが現状だという。

習近平政権の歩みはプーチン政権と驚くほど似ていて、中ロ「価値同盟」が密着していく可能性がある、という点に注視していく必要があると趙青峰氏は指摘した。

続いて「非核化と日本の課題」について五味洋治・東京新聞論説委員が、日本政府批判を含め報告した。2002年の小泉・金正日首脳会談に同行した安倍晋三首相(当時官房副長官)は、圧力を加えると譲歩する国という認識を持ったため、相手が対応を変更するまで圧力をかけるようになったと指摘。だが北朝鮮は半世紀かけ核兵器・ミサイル開発しただけに、深刻な食糧難など特別な事情がない限り圧力で屈服させられないだろうと指摘。

日朝関係は細くなる一方で、安倍首相は、北朝鮮の脅威を最大限に国民の心に刻み込み、憲法改正を実現することに力を注いでおり、2020年東京オリンピックを控え朝鮮半島で戦争が起こらないように韓国と協力しなければならないのに努力する姿勢が見えないという。

五味論説委員は、①拉致問題を日朝国交正常化と連携させ請求権補償を伴い進めれば北朝鮮の経済発展が可能となる、②日本はIAEA(国際原子力機関)の査察費用の負担など非核化プロセスに具体的に関与しなければならない、③北東アジア非核地帯構想は北朝鮮の核放棄を誘引できるので日本政府の後押しが必要だ―などと指摘した。

ロシアの立場については、ジャナ・バロド(韓国)西京=ソギョン=大学教授が「韓国の新北方政策とロシアの新東方政策を結び付ける政策」を英語(韓国語通訳)で報告した。

クリミア占領後の2014年に西側制裁の対象とされたロシア政府は「アジアへの新しい基軸戦略」による新東方政策へ姿勢転換、孤立が深まる中で北朝鮮に急接近した。

一方、文在寅大統領は、緊張解消のため韓国の北方政策を変えていくと発表、韓ロ両大統領は北朝鮮核問題の解決が東アジア開発の最優先事項で、軍事力を使わないと合意した。

また朝鮮半島緊張の中で2017年、ロシアと中国は北朝鮮が核とミサイル開発計画を現状凍結し、米韓が合同軍事演習の規模を減らすという「二重凍結」イニシアティブを提案した。ロシア側によると、同イニシアティブは、南北朝鮮当局との接触や、高水準の米朝会談の関係者との意見交換でも有用であることが証明されたという。

ロシアの新しい東方政策と韓国の新しい北方政策が互換性を持っていることは、2017年極東経済フォーラムで文在寅大統領が強調した。ロ韓双方は、非核化が3極協力(ロシア・北朝鮮・韓国)促進、汎朝鮮半島の経済プロジェクト(ガスパイプライン、汎朝鮮半島鉄道、「エネルギーブリッジ」)を促進する条件を作り出すことになろうと同意したという。

韓国の国立外交院の金漢権=キム・ハングォン=教授が報告にコメントを加えた。趙青峰氏の「運命共同体」報告には、「一帯一路」事業推進とともに中国外交の主要方針となり、米中の戦略的競争の構図が徐々に強化される状況下で、中国のリーダーシップを強化する戦略的な動きとして解釈されるようになりつつあると指摘。

またバロド教授の報告に対しては、朝鮮半島周辺で日米の軍事協力が強化されると、これに対抗して中・ロの共同対応能力を誇示する動きが目立つと指摘、韓ロ以外の他の要素も考え合わせる必要性を指摘した。

日本政府が一貫して南北首脳会談と米朝首脳会談に懐疑的態度を取っているという五味洋治論説委員の指摘は、南北交流と米朝会談を通じて朝鮮半島の非核化と平和体制を成し遂げようとする韓国に多くの問題点を投げ掛けていると指摘。日本社会の主要な関心である日本人拉致問題では、韓日間で一歩進んだ協力構築が必要だが、五味論説委員の言うように、日本人拉致問題に没頭していると、今動いている非核化交渉にブレーキをかけるようになりかねないとの懸念を表明した。

 

最後に司会者が報告者に追加発言を求め、趙青峰氏が今後の在韓米軍の意義付け変更の必要性を指摘。五味洋治論説委員が河野外相の訪韓を挙げて日韓のさらなる意見交換を要請。バロド教授がプーチン大統領にとり東アジア地域では軍事より経済の方が重要だが米国や日本との協力が進んでいない、協力基盤としては6カ国協議が最適と思うと述べた。


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